【業界記事】2025年最新|電気工事業界におけるM&Aの動向と注目事例を解説

電気工事業界は、日本のインフラを支える重要な産業でありながら、少子高齢化や技術者不足、後継者不在といった課題に直面しています。特に中小企業では、事業承継(譲渡・売却)の必要性が年々高まっており、M&Aを活用した第三者承継が注目されています。本記事では、電気工事業界におけるM&A動向や事業承継のポイント、成功事例を交えて詳しく解説します。
【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
中小企業の事業承継を支援するM&A仲介会社であり、約20年の財務コンサルティング実績を有する。公認会計士や税理士、中小企業診断士などの専門家が在籍し、全国規模で中小企業のM&Aをサポートしております。
※中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録済
※中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について
電気工事業界とは?
電気工事業界は、住宅・ビル・工場・公共施設などにおける電気設備の設計・施工・保守を担う業界です。照明設備、受変電設備、通信設備、太陽光発電設備など、多岐にわたる分野で社会インフラの根幹を支えています。
- 主要業務:配線工事、受変電設備工事、照明設備工事、弱電設備工事、再生可能エネルギー設備工事、EV充電設備工事、情報通信設備工事
- 事業者数:約50,000社(出典:日本電設工業協会)
- 有資格者数:電気工事士 約130万人(出典:経済産業省)
また、電気工事業は「建設業許可」の取得が必要であり、公共工事や大規模案件を受注するには経営事項審査(経審)の点数も重要視されます。
電気工事業界の課題
1. 経営者の高齢化と後継者不足
電気工事業界の経営者平均年齢は62歳を超え、60%以上の企業が後継者未定という状況です(出典:中小企業庁 事業承継ガイドライン)。
2. 技術者・有資格者不足
電気工事士などの国家資格保有者が高齢化しており、若年層の入職が進まないことで技術継承が危機的状況にあります。
3. 法改正・制度対応の負担
電気工事業界は近年、以下のような法改正や制度変更への対応が求められています。
- 建設業法改正(2025年施行予定):働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が適用され、労務管理の厳格化が必要となりました。
- インボイス制度導入(2023年10月):適格請求書等保存方式への対応により、事務処理負担が増加。
- 省エネ法改正・再エネ導入義務化:脱炭素社会実現に向け、電気工事会社にも高度な省エネ・再エネ対応力が求められています。
これらの制度変更は中小企業にとって大きな負担となっており、経営資源の限られた企業では対応が遅れるケースも見受けられます。
電気工事業界M&A動向
電気工事業界では、以下の理由からM&Aが加速しています。
- 事業承継問題の解決手段
- 再エネ・EVインフラ対応の技術確保
- 人材・資格者の確保
- 施工エリア拡大のための地域企業買収
建設業関連M&A件数は増加しており、特に再生可能エネルギー関連の工事会社や、公共インフラ対応力を持つ企業が高評価を受けています。
当社における電気工事業界のM&A事例
電気・通信工事 × 電気工事・設備工事全般

前オーナーの急逝後、ご家族が経営していた企業が限界を感じ譲渡を決意。初回面談時は債務超過寸前でしたが、譲受企業は本社の立地や事業内容、人材に魅力を感じ、条件合意に至りました。弊社は譲受側のニーズを社長と丁寧に共有・整理していたため、成約までスムーズに進行。引継ぎ後、ご家族も退任から一転、残留して事業を支える意思を固められました。
※【事例】譲受企業ニーズの理解により円満スピード成約
M&Aのメリットデメリット
業界特有のメリット
- 有資格者・建設業許可・経審の承継
- 公共工事実績・元請取引の維持
- 再エネ・EVインフラ技術の獲得
業界特有のデメリット
- 技術者流出リスク(買収後の離職)
- 許可更新・専任技術者要件の確認
- 地域密着型企業の文化ギャップ
M&Aの主要な流れ
電気工事業界におけるM&Aは、資格者や建設業許可、元請取引、公共工事実績など、業界特有の資産を円滑に承継することが重要です。以下に一般的な流れを詳しく説明します。
- 事前準備・現状整理 財務諸表、受注状況、建設業許可証、経審点数、有資格者一覧、主要取引先リストを整理し、自社の強みと課題を明確にします。
- M&A仲介会社・専門家への相談 業界に精通したM&Aアドバイザーに依頼し、適正な企業評価(バリュエーション)を受け、譲渡方針を策定します。
- 買い手企業とのマッチング 技術力の補完やエリア拡大を目的とする企業を中心に候補を選定。文化や経営理念の整合性も重視されます。
- 基本合意・デューデリジェンス 基本合意書締結後、財務・法務・許認可・労務・取引契約など多岐にわたる詳細調査を実施。建設業許可の承継要件や、専任技術者の配置状況も確認します。
- 最終契約締結・クロージング 株式譲渡契約や事業譲渡契約を締結し、関係各所(取引先・金融機関・従業員)への説明、許可関連の変更手続きを行います。
- PMI(統合プロセス) 組織文化の統合、システムや業務フローの標準化、人材の定着施策、顧客関係維持のためのフォローを実施します。
電気工事業界の今後の展望
電気工事業界は、社会インフラの維持・発展に不可欠な存在として、今後も多くの成長機会が見込まれています。以下のポイントが重要です。
1. 再生可能エネルギー・ZEB対応の拡大
政府のカーボンニュートラル政策により、太陽光発電設備や蓄電池工事、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の需要が急増。これに対応できる技術力を持つ企業が市場で優位に立つでしょう。
2. EVインフラ整備の進展
電気自動車(EV)の普及に伴い、充電スタンド設置工事のニーズが急拡大。国の補助金制度も追い風となり、今後の成長分野として注目されています。
3. インフラ老朽化対策
高度経済成長期に整備された公共インフラの老朽化が進んでおり、受変電設備や道路照明、トンネル内設備などの更新工事が本格化する見通しです。
4. DX化と生産性向上
施工管理システムやBIMの導入が進み、現場作業の効率化が求められています。デジタル技術を活用できる企業が生き残りをかけた競争で有利となります。
5. 中小企業の集約化・M&A促進
人材不足や法規制強化により、規模のメリットを活かすための業界再編が進行。事業承継型M&Aが今後さらに増加することが予想されます。
まとめ
電気工事業界は、日本の社会インフラを支える重要な役割を担いながらも、深刻な経営者の高齢化や技術者不足、法改正への対応といった課題に直面しています。これらの課題を乗り越える手段として、近年注目されているのが「事業承継型M&A」です。
M&Aを活用することで、企業の技術や人材、建設業許可、公共工事の実績といった大切な資産を次世代へ円滑に引き継ぐことが可能になります。また、再生可能エネルギーやEVインフラ整備といった成長市場に対応する体制強化にもつながります。
一方で、M&Aには適切な準備と専門的な知識が不可欠です。特に電気工事業界特有の許認可や有資格者の承継、文化統合には注意が必要です。
今後、事業承継を検討する経営者は、早期から計画的に対策を講じることで、企業価値を最大化し、従業員や取引先、地域社会に貢献し続けることができるでしょう。
事業承継やM&Aに関するご相談は、電気工事業界に精通した専門家に依頼し、最適な道を見つけてください。
■ 担当コンサルタント紹介
たすきコンサルティングでは、電気工事業界に精通した専門コンサルタントが、貴社のニーズに合わせた最適な事業承継支援を提供しております。後継者選定から経営資源の引継ぎまで、専門的なサポートで貴社をバックアップいたします。

業界特化法人部 シニアコンサルタント
古川 龍也
京都大学大学院卒、メガバンクに入行し、法人融資・企業調査業務に従事。グループ証券会社に出向し、M&A業務を経験。2021年1月にたすきコンサルティングに入社し、多数の会社を成約に導く。
■ 譲渡(事業承継)に関するお問い合わせ
電気工事業界を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。人材不足や市場競争の激化、事業承継の課題など、多くの経営者様が将来への不安を抱えていらっしゃいます。
事業の譲渡や承継についての第一歩は、専門家への相談から始まります。情報収集や自社評価など、ぜひお気軽にお問い合わせください。下記フォームより、必要事項をご記入の上送信いただければ、迅速にご対応させていただきます。