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【LPガス業界の事業承継】業界動向と成功のポイント

LPガス業界は、日本国内で広く普及しているエネルギー供給業の一つですが、近年、事業承継(譲渡・売却)の必要性が高まっています。業界の構造変化や規制の強化、経営者の高齢化などが影響し、多くの企業が承継の課題に直面しています。本記事では、LPガス業界の事業承継について、現状の課題や市場動向、成功のポイントを詳しく解説します。

【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
中小企業の事業承継を支援するM&A仲介会社であり、約20年の財務コンサルティング実績を有する。公認会計士や税理士、中小企業診断士などの専門家が在籍し、全国規模で中小企業のM&Aをサポートしております。 
※中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録済
※中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について


LPガス業界とは?

LPガス(液化石油ガス)は、プロパンやブタンを主成分とするエネルギー源で、日常生活や業務用として幅広く使用されています。石油精製や天然ガス採取の過程で生成され、環境への負荷が少なく、高効率なエネルギー供給が可能です。
LPガス業界は、エネルギー供給の重要な役割を担う業界で、ガスの生産、供給、販売、保守を行う企業が含まれます。小規模な家族経営の事業者から大規模な企業まで幅広いプレーヤーが存在しますが、地域密着型の経営が多く、地域ごとの特性に強く依存しています。

LPガス業界の現状と課題

本国内のLPガス利用者は約2,400万世帯に及び、エネルギー供給の重要な役割を果たしています。しかし、以下の要因により、業界の事業環境は厳しさを増しています。

競争激化:大手企業の市場参入が進み、中小規模の事業者が競争に苦戦。

経営者の高齢化:全国のLPガス事業者のうち、約60%以上が60歳以上の経営者で構成されている。

市場の縮小:都市部を中心に都市ガスや電気への移行が進み、LPガスの需要が減少。

規制強化:2025年4月の法改正により、保安基準やエネルギー効率に関する要件が厳格化。

出典元:一般財団法人エルピーガス振興センターの「令和3年度 石油ガス流通・販売業経営実態調査」

事業承継が必要とされる背景

経営者の高齢化と後継者不足

LPガス業界では、家族経営の事業者が多く、後継者が不在のケースが増えています。親族承継が難しく、第三者承継(M&Aなど)を検討する企業が増加傾向にあります。

業界特有の課題

採用難と人材不足:技術継承の問題もあり、業界全体で慢性的な人手不足。

保安業務の負担:LPガス事業者には365日対応が求められるため、業務負担が大きい。

設備投資の負担:法改正により、老朽化した設備の更新が求められ、多額の投資が必要。

事業承継の選択肢

親族内承継

親族内で後継者を確保し、事業を引き継ぐ方法。しかし、現状では後継者がいない、または事業の将来性に不安を感じるケースが増えている。

社内承継

従業員に経営を引き継ぐ形の事業承継。後継者の育成期間や資金調達が課題となる。

M&Aによる第三者承継

M&Aを活用することで、業界の大手企業や異業種の投資家が事業を引き継ぐケースが増加している。これにより、以下のメリットが得られる。

事業の存続が確保される

従業員の雇用を維持できる

売却資金による新たな事業展開が可能

2025年4月の法改正とその影響

法改正のポイント

2025年4月より、以下の規制が強化される予定です。

  • 保安基準の厳格化:ガス設備の点検義務が強化される。
  • エネルギー効率の向上要件:一定のエネルギー効率基準を満たさない事業者は行政指導の対象となる可能性。
  • 中小事業者への影響:設備更新が必要となり、経営負担が増大。

事業承継を検討する好機

法改正により、中小LPガス事業者にとって経営負担が増すため、今後2~3年の間にM&Aを検討する事業者が増加すると見込まれます。

M&Aのメリットとデメリット

メリット

  • 業務の継続性: M&Aを通じて事業の安定した運営が可能になります。
  • 経営負担の軽減: 資本力のある企業に経営を委ねることで、経営者の負担が軽減されます。
  • リソースの獲得: 専門知識や資金へのアクセスが容易になります。

デメリット

  • 経営自由度の低下: 統合後の意思決定権が限定される可能性があります。
  • 交渉の困難さ: 適切な条件での合意を得るまでに時間がかかります。
  • 文化の違いによる摩擦: 統合後の社内文化の違いが問題になることがあります。

事業承継を成功させるポイント

1. 事業価値の正確な評価

事業承継を進める上で、事業価値の適正な評価が重要です。財務状況だけでなく、顧客基盤、保安体制、設備状況なども考慮する必要があります。

2. 早期の準備

事業承継には数年単位の準備期間が必要です。以下のプロセスを踏むことで、スムーズな承継が可能になります。

  1. 事業の棚卸し:資産・負債・契約状況の整理
  2. ・後継者の選定・育成
  3. ・承継計画の策定
  4. ・関係者との調整(取引先・金融機関)

3. 専門家の活用

税理士・会計士・M&Aアドバイザーなどの専門家と相談し、最適な承継プランを策定することが重要です。

LPガス業界のM&Aの流れ

1. 事前準備

事業承継を円滑に進めるためには、事前の準備が重要です。以下のポイントを整理し、準備を進めます。

  • 現状分析:財務状況、事業の強み・弱みを把握する
  • 事業価値の評価:業界の市場価格と比較し、適正な企業価値を算定
  • 承継方法の検討:親族承継、従業員承継、M&Aの選択肢を比較

2. 買い手の選定とマッチング

LPガス業界では、買収側企業の選定が重要です。主な買収候補として、

  • 業界内の大手LPガス会社:地域拡大やシェア強化を目的とした買収
  • 異業種企業:エネルギー事業へ新規参入を狙う異業種の企業
  • 投資ファンド:LPガス事業の成長性を見込み、投資するファンド

を想定し、M&A仲介会社などを活用して候補企業を探します。

3. 基本合意とデューデリジェンス(企業調査)

買収候補が決まったら、基本合意を締結し、詳細な調査を行います。

  • 財務デューデリジェンス:収益性、負債状況、キャッシュフローの確認
  • 法務デューデリジェンス:契約、許認可、コンプライアンスの確認
  • 事業デューデリジェンス:顧客基盤、設備投資計画の精査

4. 最終契約の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な買収条件を交渉し、M&A契約を締結します。具体的には以下の内容が含まれます。

  • 譲渡価格の決定:企業価値に基づいた適正な売却価格の設定
  • 従業員の処遇:買収後の雇用継続や待遇条件の調整
  • 契約条項の確定:売却後の経営権、経営者の関与度などを明確化

5. 統合作業(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)

M&A成立後は、統合作業(PMI)が重要です。特にLPガス業界では、

  • 顧客管理システムの統合:既存のLPガス契約を適切に管理
  • 保安業務の標準化:新しい組織の安全基準の統一
  • 従業員の教育・研修:新しい経営方針や業務プロセスの周知

を円滑に行うことで、M&Aの成功確率が向上します。

まとめ

LPガス業界の事業承継は、業界特有の課題や法改正の影響を踏まえ、慎重に進める必要があります。特に、後継者不足や経営負担の増加を考慮し、親族承継・社内承継・M&Aなどの選択肢を比較検討することが求められます。

2025年の法改正を控え、事業承継を考える経営者にとって、今が適切なタイミングであることを理解し、計画的な準備を進めることが重要です。


■ 担当コンサルタント紹介

たすきコンサルティングでは、LPガス業界に精通した専門コンサルタントが、貴社のニーズに合わせた最適な事業承継支援を提供しております。後継者選定から経営資源の引継ぎまで、専門的なサポートで貴社をバックアップいたします。

業界特化法人部 シニアコンサルタント
古川 龍也

京都大学大学院卒、メガバンクに入行し、法人融資・企業調査業務に従事。グループ証券会社に出向し、M&A業務を経験。2021年1月にたすきコンサルティングに入社し、多数の会社を成約に導く。



■ 譲渡(事業承継)に関するお問い合わせ

LPガス業界を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。人材不足や市場競争の激化、事業承継の課題など、多くの経営者様が将来への不安を抱えていらっしゃいます。
事業の譲渡や承継についての第一歩は、専門家への相談から始まります。情報収集や自社評価など、ぜひお気軽にお問い合わせください。下記フォームより、必要事項をご記入の上送信いただければ、迅速にご対応させていただきます。


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