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ホテル・旅館業界のM&A動向:最新トレンドと今後の展望

1.はじめに

ホテル・旅館業界は、観光需要の変動や経済環境の影響を大きく受ける業界です。特に近年は、新型コロナウイルスの影響による市場の縮小や、インバウンド需要の回復など、急激な変化が続いています。その中で、M&A(企業の合併・買収)が事業継続や成長戦略として注目されています。本記事では、ホテル・旅館業界のM&A動向、成功事例、そして今後の展望について詳しく解説します。

【記事提供:株式会社たすきコンサルティング】
中小企業の事業承継を支援するM&A仲介会社であり、約20年の財務コンサルティング実績を有する。公認会計士や税理士、中小企業診断士などの専門家が在籍し、全国規模で中小企業のM&Aをサポートしております。 
※中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録済
※中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について

2. ホテル・旅館業界の概要

ホテル・旅館業界の定義

ホテル・旅館業界とは、宿泊施設を提供するビジネス全般を指し、国内外の観光客やビジネス利用客を対象にサービスを提供する業界です。国内における宿泊施設の形態は多様であり、それぞれ異なるターゲット層や運営方法が存在します。

ホテル・旅館業界の分類

以下の表は、日本国内におけるホテル・旅館業界の主要な分類を示しています。

分類特徴主なターゲット
ビジネスホテル簡素な設備、手頃な価格出張・短期滞在者
シティホテル高級感のある設備、レストラン・宴会場完備観光客・ビジネス客
リゾートホテル観光地に立地、レジャー施設を併設観光客・ファミリー層
旅館和風の宿泊施設、温泉や伝統的なサービス提供国内外の観光客
カプセルホテル簡易な個室、低価格一人旅・短期利用者

3. ホテル・旅館業界の市場環境

COVID-19の影響と回復

出典:観光経済新聞「ホテル・旅館2023年の倒産 67件、負債235億6600万円 件数減少、額は増加」(2024/02/11)
帝国データバンク「宿泊業の倒産、件数は前年度比66.7%増の125件 増加率が過去最高(2021/04/13)


新型コロナウイルスの影響で、2020年~2021年にかけてホテル・旅館業界は大きな打撃を受けました。しかし、2022年以降は国内旅行需要の回復と、訪日外国人観光客の増加により市場は回復基調にあります。

  • 2023年の国内宿泊者数は2019年比で103.6%増
  • 2023年の日本人国内旅行消費額は2019年比で0.2%減とほぼ回復
  • 高価格帯の宿泊施設では客室稼働率の頭打ちが見られる


人材不足と経営課題

出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」

ホテル・旅館業界では、コロナ禍を経て人材流出が深刻化しています。特に地方の旅館やホテルでは、慢性的な人手不足に悩まされており、業務継続が困難な状況も見受けられます。

  • 2023年の業界の人手不足割合は2019年比で18.9%増
  • 採用難により、営業継続が困難な事業者が増加


ホテル・旅館業界におけるWEBマーケティングの重要性

近年、ホテル・旅館業界ではWEBマーケティングの重要性が増しています。特に、自社サイトでの予約を増やすためにSEO対策やデジタル広告が求められております。

  • OTA(オンライン旅行代理店)への依存度が高まる一方で、手数料負担が課題
  • 自社サイトでの予約を増やすことで利益率向上
  • SNSを活用した集客の強化が重要

4. ホテル・旅館業界のM&A動向

M&Aの活発化

上記のような課題を背景にM&Aが活発化しています。特に、大手資本による地方ホテルの買収や、事業承継を目的としたM&Aが増加しています。また、事業規模拡大を狙う外資系ファンドや国内大手企業が市場に参入してきております。


代表的なM&A事例


エイチ・ワイ・ホスピタリティ・エンタープライズ株式会社による「神戸北野ホテル」の不動産取得(2024年10月31日)
エイチ・ワイ・ホスピタリティ・エンタープライズ株式会社は、2024年10月31日付で「神戸北野ホテル」の不動産を取得しました。同社は、神戸北野ホテルの総支配人・総料理長である山口浩氏が代表を務めており、今回の取得により、ホテルの運営と不動産の一体的な管理を強化し、さらなるサービス向上を目指しています。
※参考:2024年10⽉31⽇付で「神⼾北野ホテル」の不動産を取得

株式会社Brain Trust from The Sunによる株式会社デアルホームの子会社化(2024年12月)
株式会社Brain Trust from The Sunは、事業承継引継ぎ補助金を活用し、神奈川県大和市の株式会社デアルホームを子会社化しました。同社は不動産業や宿泊業を手掛けており、今回のM&Aにより、事業領域の拡大と地域活性化を図っています。
※参考:事業承継引継ぎ補助金を活用しM&A

マイナー・インターナショナルによるNHホテルグループの事業再編(2024年9月)
タイのマイナー・インターナショナルは、傘下のNHホテルグループの事業再編を行い、ポルトガルとブラジルのホテル事業をNHホテルグループに譲渡しました。この再編により、NHホテルグループは欧州と南米での事業基盤を強化し、収益性の向上を目指しています。

第一住建グループによる宿泊事業の新規開始(2024年8月1日)
第一住建ホールディングスは、子会社である株式会社INOVE STYLEを通じ、有限会社すずやの旅館業を譲り受け、新たに「INOVE VILLA OSAKA」の運営を開始しました。このヴィラは最大14名まで宿泊可能で、家族連れやグループ旅行者向けの高品質なサービスを提供しています。
※参考:第一住建グループ、M&Aにより「宿泊事業」を新規開始 「INOVE VILLA OSAKA」2024年8月1日より予約開始

株式会社温故知新による株式会社ホテルシーズン日南の全株式取得(2024年12月)
株式会社温故知新は、株式会社ホテルシーズン日南の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。これにより、温故知新は宮崎県日南市における宿泊事業を強化し、地域観光の活性化を目指しています。
※参考:株式会社温故知新、株式会社ホテルシーズン日南の全株式を取得

5. ホテル・旅館業界M&Aの今後の展望

コロナ後の収益回復とM&A市場の活性化

コロナ禍からの回復により、ホテル・旅館業界の収益性が向上しており、M&Aの市場価値も高まっています。売却を検討する経営者にとっては、今が好機と考えられます。

  • 宿泊単価の上昇により、利益率が向上
  • 投資家や事業会社の関心が増加し、M&Aが活性化


環境配慮型ホテルの台頭

サステナビリティへの関心が高まる中、環境に配慮したホテル経営が求められ、これに対応できる企業が成長する可能性があります。

6. まとめ

ホテル・旅館業界のM&Aは、経営課題の解決や成長戦略の一環として重要な手段となっています。自社で調達をしたくとも大規模修繕の費用が多額になるため、断念せざるを得ない企業様にとっては、資金力のある企業から資金調達(増資)を行うことで、経営課題を乗り切ることも可能です。また、事業承継問題を抱える企業にとっては、M&Aが有力な選択肢となり得ます。今後は、インバウンド需要の回復やデジタル化の進展とともに、さらなる業界再編が進むことが予想されます。


■ 担当コンサルタント紹介

たすきコンサルティングでは、ホテル・宿泊業界に精通した専門コンサルタントが、貴社のニーズに合わせた最適な事業承継支援を提供しております。後継者選定から経営資源の引継ぎまで、専門的なサポートで貴社をバックアップいたします。

業界特化法人部 コンサルタント
町田 大志

北海道大学を卒業後、同大学院に進学し研究に従事、修士号を取得。2021年4月に新卒で、たすきコンサルティングに入社。入社後3年半で、多数の成約を経験。



■ 譲渡(事業承継)に関するお問い合わせ

ホテル・宿泊業界を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。人材不足や市場競争の激化、事業承継の課題など、多くの経営者様が将来への不安を抱えていらっしゃいます。
事業の譲渡や承継についての第一歩は、専門家への相談から始まります。情報収集や自社評価など、ぜひお気軽にお問い合わせください。下記フォームより、必要事項をご記入の上送信いただければ、迅速にご対応させていただきます。


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